第2章 知らない女
しばらくその状態でいたが、外の喧騒が未だ止まないことにエースは痺れを切らし、行き場なくバタバタとしていた手で、その女の顔を上げさせた。
ボロボロと出てくる涙に濡れた瞳は、海のように青いことに一瞬驚いたが、エースはできるだけ優しく、その涙を掬った。
「・・・悪ぃ。今、俺の仲間が戦ってるんだ。だから、俺、行かなきゃいけねぇんだ。あれが片付いたら話を聞いてやるから、それまで、ここで待っててくれねぇか?」
ジッと見つめてくる綺麗な瞳を至近距離で真剣に見返すエース。
お互い、無言が続く。
が、甲板からドオオオオオン‼︎‼︎と大きな爆発音が聞こえ、エースは扉の方へ目を走らせた。そのまま走り出す勢いだったからか、首に回った細腕に力が入るのがわかり、また視線を目の前の女に戻す。
「・・・ちゃんと戻ってくっから、な?」
まだ涙の止まらない瞳を覗き込む。と、何か言いたげな様子だったが、一度目をつぶりゆっくりと深呼吸をしたかと思えば、コクリ、と小さくうなづいた。それに満足しエースは体を離そうとした瞬間。