第10章 海に呑まれる
「・・・・ンなっんだこりゃー!?!?!?!?」
そこでは、海が迫ってきた。
比喩はない。事実だ。エースが出た甲板は、もうすぐ海に飲み込まれそうな勢いであった。こんなこと、今まで一度もない。後ろで誰かが叫んだ。
『津波だあーーー!!!!!』
津波、ある海ではアクア・ラグナとも言う。つまり、高潮だ。
今、まさにこのモビーディック号は高波に呑まれそうになっていた。
ヤッベェ、そう思った時にはすでにエースは押し寄せてくるその波に呑まれそうになっていた。
悪魔の実を食べたエースにとって、海は強敵でしかない。死を覚悟しそうにまでなった瞬間。
「バッカやろう!!!!!死にてぇのかよぃ!!!」
そんな声が聞こえてきたかと思えば、ガッと首元を何かに掴まれ、一気にエースの体は浮上した。
なんとか津波に巻き込まれない高さにまできたエースは、未だ鳴り止まない己の心臓を落ち着かせながら、自分を助けた張本人である者を見上げた。
「悪ぃ、まじで助かった。ありがとな、マルコ!」
「ありがとな!じゃねぇよぃ!気ぃつけろ。俺も、ここまででかいのは初めてだ」
不死鳥になったマルコに抱えられながら、エースは下の惨劇を見て、ゴクリと生唾を飲む。
さっきまでエースがいた甲板は、波によって抉り取られている。もしあそこにいたら今頃・・・そう考えぞくりと身を震わせた。
「こんなのが何発もくりゃ、モビーはもたねぇよぃ」
「・・・・」
海の恐ろしさに絶句していると、エースは船のさらに下で何かが光るのが見えた。
なんだ?と思い目を細めてみてみる。
「・・・・っ?!あいつ!!何してやがんだ!!!マルコ!離せ!!」
「っ!おい!?下は海だぞ!!何してんだよぃ!!エース!!!!!」
いきなり暴れ出すエースに、マルコはパッとエースを掴む鉤爪を離してしまった。が、エースはこれ幸いとばかりに狙いを定めある一点に落ちていく。
「おい!!」
マルコが慌てて拾いに行こうと下降するも、強く風が吹き阻まれる。
バッシャーン!!!と、そのまま海に落ちた、と思われたが、なんとエースは一隻の小舟に無事着陸していた。
なんでこんなとこに小舟が?とマルコは不思議に思う間もなく、エースの怒鳴り声が響く。