第52章 1番隊
こんこん、と控えめなノックを聞き、マルコは入室許可を与えた。
そうして開かれた扉の向こうには、予想通りの女が。
「マルコさん、終わりました」
そう言って渡された資料は、細かく丁寧な文字が綴られていた。
「へぇ、こりゃあ随分見やすい。ありがとねぃ」
そう言って笑ったマルコに、ユキは柔らかい笑みを向けた。
「ドリーが思ったよりも丁寧に教えてくれたので」
「!・・・そりゃあ良かった、俺はてっきりまた喧嘩したのかと思ったよぃ」
一緒に来るかと思っていた男が来なかったのを見て、嫌な予感は当たるもんだなと思ったが、どうやらユキの表情を見る限りは随分と打ち解けたらしい。
「人の悪い部分だけ見てても仕方ないので、これからはこのいい部分を多めにしてみればきっとあの鬱陶しい質問にもなれると思ったんです」
「・・・・・よぃ」
まぁ、そんなにうまくはいかねえか、と苦笑を零したマルコは、ユキから鍵を渡される。しかし、辛口を叩くその表情が穏やかになっているのを見て、マルコはああ、と納得した。
それと同時に少しの心配も。
「・・・仲良くなるのはいいことだが、あんまり距離を詰めすぎると、厄介なことになるよぃ」
その言葉に、キョトンとしたユキは次の瞬間クスリと笑った。
「マルコさんって、過保護・・・優しいですよね」
「なんで今言い直したんだぃ」
少しだけ寄ったその眉間に、ユキは今度は声に出して笑った。
「だって、あまりにも心配そうだったから」
「・・・そりゃ、お前、あいつが拗ねちまったら宥めるのは俺たちなんだよぃ」
苦虫を噛み潰したような顔から、過去に拗ねる、なんて可愛らしい表現ではなく暴れたのだろうその姿を思い出し、ユキは胸の中に少しの寂しさを落とした。そんなユキの表情に目ざとく気づいたマルコが、幾分か低い位置にある頭をクシャリと撫でる。
「・・・まだ、1日目だよぃ」
「!・・・バレちゃいました?」
そう言ってヘラりと笑ったユキに、マルコは先ほど以上に顔を顰めた。