第52章 1番隊
「ま、今はあのバカの心配より、寂しいって言うこともできねぇ意地っ張りな妹の方をなんとかするかねぃ」
「え?」
どういう意味、と聞く前にユキの手を掴んだマルコはその窓を開け放った。
ビュオ、と夕方を知らせる風が室内に吹き込み、机の上に重ねられた書類がぱらぱらと捲れていく。
ユキの手を引くマルコが、一気にその窓の外へと身を乗り出した。それと共に、ユキの体も引っ張られ、2人して数十メートル先の海へと落ちるように空中へその身を投げ出される。
「ちょ・・マルコさん!?」
能力者2人が海に落ちれば待っているのは間違いなく『死』のみ。何を考えているのだ、と非難の声をあげるユキに、マルコは楽しそうに笑い声を上げた。
「しっかり捕まれよぃ、ユキ!」
そうしてマルコの体から漏れ出す青い光に目を見開けば、気付けばユキは青い鳥の背に乗っていた。
海面ギリギリをその燃える青い炎で弾けば、一気に高度を上げていくその青い鳥に、ユキは目を見開いた。
「これが・・・本当の不死鳥!?」
青く燃える炎は熱さを感じない。それが再生能力に繋がっていることも、マルコがこの不死鳥であることも知っていたユキだが、鳥になって飛べるなんて思ってもおらず歓喜を上げた。
「すごい!すごいすごい!」
背中で感激する妹に、マルコはクツリと喉を鳴らせる。しばらく船の周りを飛んでやれば、次第に背中から聞こえてくる声が聞こえてこなくなり、少しだけ振り返る。
「・・・ユキ」