第52章 1番隊
それを無視し、ユキはマルコから与えられたその資料を読む。しかしそれを横から取り上げられ、ユキはドリーを不愉快そうに一瞥した。
「ひっでェな、口説いてんだけど」
「ッ?!」
あっけらかんと告げれた言葉に、ユキは戸惑いの声を上げた。意味がわからない、そう言うユキの表情に、ドリーはじっと見つめる。
「俺、お前のあの青い瞳に、惚れたんだ」
その言葉に、ああ、と一気に納得したユキは取り上げられた資料へと手を伸ばした。しかしそれをひょいと躱すドリーは、不機嫌そうな顔でユキを見る。
「おい、口説いてるって言ってんだろ、答えろよ」
そう言って見つめてくる真っ黒な瞳の奥にある、少しの熱と挑発を見てとったユキは、ため息を吐いた。
「・・・ハァ。じゃあ、燃やされてくださいね」
心底面倒くさそうに答えたユキの言葉に、ドリーは目を見開いて大きな口を開けた。
「え、まじ?」
「何言ってんですか、最初から知ってたでしょう」
そう言ったユキの耳朶から、赤い光が除いた。ここは暗い。その赤い光が誰のことを指してるのかわかったドリーは、一気に白けたように資料をユキの手元に返した。
「ま、そーだけど、俺、ユキってそーいうのにかなり鈍感なんだと思ってた。反応鈍いしよ」
「・・・そう見えるなら、好都合」
その言葉に、ドリーは苦笑いを浮かべた。自分も騙されていたうちの1人だ。あの人はこれを知ってるのか、いや、知らない訳がない。だから放っておいてるのだろうなと結論づける。