第52章 1番隊
ユキは、ドリーに案内されたその書庫という場所に鍵を回した。そして開けたその場所は、たくさんの本が並んでおり、ユキは目を輝かせた。こんなに本があるところなど、見たことがない。
少し埃の被る本を指でなぞるユキに、ドリーは不思議そうに尋ねた。
「なぁユキ、なんでお前文字書けねぇの?」
案の定とばかりに質問をしてくるドリーに、前回自分のせいでマルコにエースが怒られたことに反省していたユキは荒れそうになる心を無にする。
「書けない人も読めない人も、この世にはいっぱいいるでしょう」
冷たく突っぱねれば、それもそうか、と両腕を頭に回して奥にあるテーブル席に腰を下ろした。ユキは、一通りぐるりと書庫内を周り、ドリーの横を通り過ぎ、テーブルを挟んだその席に座ろうとした。
しかし、ユキの手を掴んだドリーによって、その隣に腰掛けたユキはじろりと睨みつける。
「隣のが、教えやすいんだよ」
そう言って笑うドリーに、ユキは仕方がない、とばかりに少しの抵抗のように椅子をドリーから離して座る。
それにも負けず、ドリーはユキの手元にある資料を覗き込んだ。
「ッ」
「ん?」
いきなりの至近距離に、ユキがその身を硬くしたのに気がついたドリーは、その顔を覗き込む。
「・・・ッ近い・・!!」
そう言って押される手から覗く顔は少し赤らんでいて、ドリーは目を丸くした。
「なんか、男慣れしてねぇよな、お前って」
「・・・・・・どういう意味ですか」
「いや、可愛いってことだよ」
ニッと笑うドリーに、ユキは思い切り顔を顰める。どうしてか、エースやサッチに言われるその言葉には照れるが、ドリーに言われると悪寒が走った。