第51章 彼の留守
本気で抱きしめたら折れそうだな、と思いながら、ユキの柔い体を思う存分に抱きしめ、その甘い匂いを吸い込む。1週間離れることに寂しさを感じているのは俺の方が大きいかもな、と苦笑を浮かべていると、ユキから優しい声が届く。
「ね、だから平気だよ、大丈夫、ここでエースの帰り、待ってるね」
「・・・・ん」
「気をつけてね」
「ああ」
「いってらっしゃい」
その言葉に、エースはようやくユキを離す。そうして向き合った顔に、最初はあった泣き出しそうな表情がないことに満足しながら、大きく頷いた。
「・・・おう、行ってくる!」
ニッと笑みを浮かべて飛び出したエースは、もう後ろを振り返ることはなく、その炎で地平線の端まで一気にストライカーを走らせた。