第49章 雨音とともに
「・・・私とエースは、姉弟(キョウダイ)だね」
ピタ、とエースの動きが止まるのがわかり、ユキは首を傾げる。てっきり、そうだな、と返してくるものだと思っていたユキは、微動だにしないエースの頭を不思議そうに見つめる。
「・・・・・・・・ねぇよ」
「え・・?」
小さく呟かれた言葉は雨音に掻き消され、ユキはもう一度聞き返す。
「兄妹の関係は、いらねぇ」
上げられたその瞳が、どこまでも真っ直ぐで強く、ユキは目を見開いた。姉弟、といえばユウを思い浮かべていたユキだが、エースを弟とするのを嫌がっているのかと思い訂正する。
「・・・・・エースを弟にするのも変か・・・恩人だもんね・・・・じゃあお兄さん?」
ふわ、と笑うユキに、エースは眉を寄せる。
「・・・兄貴なら、いっぱいできたろ」
「え?・・・アハハ、この船に乗ってる人たち皆お兄さんなの?」
エースはいっぱいお兄さんがいるんだね、ととぼけるユキをじっと見つめる。しかしその視線に気づきながらも、こちらを振り返ろうとはしないユキ。
「大家族だよね、オヤジさんってすごい。こんなに大勢の人たちから慕われる人なんて、見たことない・・・・それに、ここにいる人たちは皆優しくて、マルコさんやサッチさん、もちろんエースも、皆暖かい。」
細い手を傘の外へと伸ばし、雨の雫を掌に受け止めるユキに、エースは声を低くして問う。