第49章 雨音とともに
「・・・・人間乾燥機みたい」
感心したようにそれを見るユキは、ホゥと息を吐いた。その言葉に顔を顰めるエースは、その首へと腕を伸ばした。
「今度から濡れた時はエースの火で乾かしてもらいに行こうかな」
そう可笑しそうに言うユキに、ぎゅう、とその細い首を羽交締めるように回した腕に力を入れる。途端にグエッと喉を鳴らすユキを見て、ハハッと笑みを零す。
「俺をんなもんに使おうとは、いい度胸じゃねぇか」
「・・・ぐ、ぐるじ・・・ごめ、ごめんって」
パタパタとエースの腕を叩くユキに、入れていた力を抜いてやる。あまり力も入れていないその腕に解放されたユキの、けほっと空気を肺に入れるその姿に、弱っちいなと視線を送る。
「・・っは・・もう、私は普通の女の子なの」
「フツー?」
「何よ」
疑問の声をあげれば、じろりと睨むその顔がおかしく、エースは弾けたように笑った。
「プハッ・・そうだな、フツーの女だ、この船に乗るくらいの」
「・・・・普通に聞こえない言い方」
拗ねたように言うユキの頭頂部に置いた顎をぐりぐりと押し付けてやる。すると痛い痛いと講義をあげるユキを体全体で包み込んでやる。