第49章 雨音とともに
たん、と軽やかにその場に着地したエースは、尻をつき両手を後ろへつくその男の隣に投げ出された望遠鏡を見る。
「・・・・・・・何か、見たか?」
凄むエースのその声に、ヒッと喉を鳴らすその見張り役の男は、ぶんぶんと首を左右に振る。
「・・・っユキちゃんの下着を見ようなんて、そんなこと・・!!」
必死に繕うその見張り役に、エースは少しだけ胸を撫で下ろす。さっきの能力のことを見られてないなら良かった、と。しかし同時に、ユキの透けた体を見ようと望遠鏡を覗き込んだであろう男に苛立ちが募る。
ボオ、と燃える炎を出し、エースはゆっくりと男に近づき、しゃがみ込んだ。
「・・・・あいつの無自覚で警戒心の無いところには俺もほとほと困り果ててんだ・・・・お前もそう思うだろう?」
「え、いや、は・・・はい」
「だからよ、もし今後もそーいうことがあったらよ・・・・・」
ゆらゆらとその掌で揺れる炎が、一瞬だけ大きく膨らんだ。
「・・・お互い、気をつけような」
そう言って笑うエースの目が一切笑っていないことに、コクコクと涙を流しながら必死に頷く男。そんな男を満足げに見たエースは、ニッと笑いかけた。
「今日の見張り、代わってやんよ」
「え!?いや、隊長にそんなこと」
「いいって、任せろ。お前もこんな雨の中で見張りなんてやりたかねぇだろ?」
「そりゃ、まぁ・・・」
「な!ユキのこと見とかねぇといけねぇし、頼むよ」
そう言って笑うエースに、しぶしぶ男は頷いた。ロープをつたって甲板に降り立つ男に、ユキは軽く会釈しながら上を見上げた。
すると、そこでは手招きするエースの姿。来い、という意味なのか。
その手に導かれるようにして、ユキはボソリと呟いた。