第49章 雨音とともに
ズルッと綺麗に足を滑らせた女、ユキは、バシャンとその場に尻餅をつくかと思われたが、はたと気づけば平然と立っているユキ。
それを見て、エースは少し眉を寄せる。あらかじめ持ってきていた少し大きめの傘を開き、甲板の真ん中に立ち尽くすユキへと足を進めた。
「・・・・・ユキ」
「!」
エース!そう言ってにこりと笑いながら振り向くユキ。何も持たず雨に当たるユキに、エースはそっと傘を持つ手を傾けた。
「お前な、能力は使うなってあれほど言ったろ」
不機嫌そうに言ったエースに、ユキはバレた?と茶目っ気たっぷりに笑った。
「でも、誰もいないしいいでしょう?」
「上に見張りがいる」
「・・あー」
「・・・ハァ・・気をつけろよ、ったく」
ごめんねーと笑うユキの表情はやはり気の抜けたようなもので。これ以上言っても無駄だと分かったエースは、びっしょりと濡れたユキの格好に目を向ける。
「・・・・・・」
「・・・・エース?」
じっとユキの格好を見て黙り込んだエースに、こてりとその小首を傾げたユキ。あまり露出をしないユキの格好は、白の長袖のシャツ一枚にスカートといったラフな格好だ。しかし、今や白のシャツは雨に濡れ、ぐっしょりと肌に張り付く。
肌色の見えるそのシャツから、ふっくらとした膨らみが強調され、下に着るキャミソールがそれをさらに誇張しているような姿だ。それに気付かぬ本人は素知らぬ顔で額に張り付いた前髪を持ち上げる。
その顎からぽた、と雫が垂れていくのを見て、エースはふいと視線を逸らせる。