第47章 怒気
「なぁユキー、明日は休みだろー?俺と島降りようぜー」
「なんで私があなたなんかと島に降りなきゃいけないんですか」
「うわっ、なんかって言いやがった!」
「傷ついてどこかに行ってくれませんかねぇ」
「俺は鋼の心を持ってるからな、心配するな、お前の毒舌にはもう慣れたぞ!ドーンとこい!」
「・・・・・鬱陶しい」
心底嫌なものを見る目でドリーへ視線を送るユキに、その体を震わせるドリー。
「くぅッ・・痺れるねェ〜・・!お前のその氷山みてぇな冷たい眼差し!」
「・・・・お前って呼ぶの、やめてくれません?仲良く思われてしまうでしょう」
「何言ってんだ!俺たち仲良いじゃねぇか!」
「・・・・」
ジロリ、ともうドリーに笑顔のカケラさえ見せなくなったユキの言いたいことがその場に見えたような気がして、周りのコックたちはそっと視線をそらす。
「ハッハッハ!その『どこが』って言いたい視線!さすが俺の友!」
「友達になった覚えはありません」
「そんな冷てェこと言うなよ!毎日一緒に仕事してる仲間じゃねぇか」
ニッと笑うその笑顔には、相も変わらず悪気はない。しかし、ユキにはどうしてもその言葉を肯定する気が起きなかった。他のコック達がその言葉を言ったのなら、まごうことなく即頷いていたそれに、ユキは渋い顔を返した。
「・・・・・じゃあ空気というもの、読んでくれません?」
「はっはっは!そりゃ無茶な話だ!空気は読むもんじゃねぇ、吸うもんだ!」
そう言って笑うドリーに、ユキはふつふつと湧き上がる怒りを必死に沈めようにため息を吐いた。
「・・・とにかく、必要以上に関わらないでください。同じ班なので業務連絡程度の会話はします」
そう言って踵を返すユキに、ドリーはつまらなそうに両腕を頭の後ろで組む。
「あーあー、そうやって壁ばっか作って、本当に誰よりも幸せになんかなれんのかよ」