第45章 変化
「・・・エースも、この瞳が黒いのは、好きじゃない?」
「・・・・いんや?まぁ赤でもよかった気はするが」
「フフッ・・・赤は、エースの色だから・・・そこまで染まるのは、ね?」
「・・・・お前な」
「冗談よ・・・私は黒い瞳が好き。珍しそうに見られなくなるし、何より普通になれた気がするから」
「・・・・・」
ギュッと目を覆うエースの手を握るユキ。その手が少し震えていることに気づいたエースは、じっとユキを見下ろした。
「あの色はね・・・・私とユウが売られるきっかけになったの。1番嫌いな色。あいつは、この色のためだけに大勢の人を殺したの。ゾッとしたわ、人間の欲に」
「・・・・・」
「だから、黒にするの。隠していたい。ユウにどれほど褒められても、どうしても私はこの色を好きにはなれなかった。この色に価値があるなんて思わない。」
今、どんな目をしているのか、ただそれだけが気になったエースは、そっとその手を外す。ピクリ、とユキの手が反応したのが伝わったが、素知らぬ顔でその黒くなった瞳を覗き込んだ。
「・・・いいじゃねぇか、異質でも、普通でも。ここにはもう、お前を狙う奴らはいねぇし。そんなに身構えるな。楽にいこうぜ、ユキ」
「・・・・・・」
「それに俺ァ、お前の海の色が好きだ。その黒い瞳も好きだ。・・・ま、何色に染まろうが、ユキの強い瞳が好きなんだよな、結局」
「!」
「だからよ、笑え。何色でも、ユキはユキだろ」
「エース」
クシャリ、とその顔が歪むのを見て、エースはゆらゆらと風に揺れるその髪を撫でる。
欲しかった言葉をもらい、ここ数日溜め込んでいた心の中のわだかまりがなくなるのを感じたユキは、その心地よい日差しにかかる笑顔に、ふわりと笑い返した。