第45章 変化
すると、そこには風に当たりながら海を眺める、白ひげのマークを背負ったその広い背があった。ここしばらくユキの仕事が忙しく、なかなか会える時間を作れなかったのだ。ドリーなどというよく分からない人と過ごす時間なんてもったいなさすぎる。
そんな人間に、ユキは自身の心を荒らされることが1番苛立っていたのだ。その苛立ちから解放されたく、ユキはその背に声をかけた。
「エース!」
「おう、ユキ!久しぶりだな」
振り返ったその顔には屈託ない笑顔があり、ユキは胸の中のわだかまりがスゥと消えていくのを感じた。
「そうだね」
「仕事はいいのか?」
「・・・うん」
じっとエースの隣で海を眺め黙り込むユキに、エースは首を傾げる。
「・・・?どうかしたか?元気ないぞ」
そんなエースに、ユキはぽつり、と波にかき消されるくらいの声で零す。
「・・・・・・・・人と関わるのは、疲れる」
「・・・・・」
ぼんやりと海を見つめるユキに、エースはじっと目を向ける。
最近、ドリーと仲がいいらしいという話をサッチからは聞かされていたが、この様子ではどうにもうまくいっているようには見えない。大方、あのドリーの性格だ。あまり人との距離を詰めようとしないユキに対し、ズカズカと遠慮なしに話しかけているのだろう。そしてそれを嫌な顔を見せないよう気をつけながら苦笑いで交わすユキが容易に想像でき、エースは苦笑する。
そんな頑張って馴染もうとしなくていいのに、と思いながらも、その頑張りが今のこいつを支えているものなのだからエースに奪えるわけがない。ユキの気苦労に、労いも込めぽんぽんとその低い位置にある頭に手を乗せてやる。