第45章 変化
あの宴で何千といるクルーの中、若い青年が興味津々に瞳の色を聞くものだから、ユキも流石にその名を覚えた。そしてその青年がなんと同じ隊に所属していたとは、気がついたのは昨日だが、ユキは初対面からガツガツと人の事情というものに片足を突っ込もうとしてくるこのドリーと名乗った青年を苦手としていた。
しかし先日、なんだかんだと危ない時にエースを呼んでくれたりと、一応助けてもらったのでユキはその背を呼び止め、ありがとうと感謝を述べた。
それに対し、ドリーは目を丸くしてユキの瞳を覗き込み、絶叫した。
「なんだその色!!!!!」
「!?」
礼を述べたらよく分からないことにキレられたユキは、びくりとその肩を揺らした。そんなユキの肩を掴み、ドリーは慌てて聞く。
「海の色は!?」
「海の色?・・・・ああ、目の・・・黒いコンタクトレンズ付けてるだけですよ。前の島で見つけたんです」
そう、ユキはずっと、黒のコンタクトレンズを付けて生きてきた。エースと初めて会った時もずっとつけていた。なのに、波に攫われてしまった時に流され、無人島では手に入らないからと諦めていたのが、先日の島で買い物をしている際見つけたのだ。エースが初め瞳の色が変わったと言っていたのも、そのせいだ。
「・・・なんで!?俺、あの色すごい好きだったのに」
いや、君の好みなんて知らないから、と心で返しながらも、ユキはその日ずっと言い続けた決まり文句を口にする。
「だって、あの色はあまり好きじゃないから・・・元々、こうやって黒い瞳で生きてきたんです」
そう言うと、大体の人はなんらかを察し、引いた線を踏み越えようとはせず、そうかと納得してくれた。しかし、目の前にいるこの少年はどうやら違ったようで。
いきなりポロポロと泣き出すその少年にギョッとするユキ。
「え!?いや、泣いて・・?なんで・・・?」