第43章 一目惚れ
「だから、穴、開けてやる」
一瞬、耳を疑ったが、その手にあるピアッサーを見て、エースが本気だと知り腰を引かせる。
「っ!」
「っお前!落ちても助けてやれねぇんだから、じっとしてろ!」
ぐらりと体が傾くのを、エースの腕がしっかりと支える。思わず川に真っ逆さまになっていた未来を想像し、その顔を蒼白にしたユキを見ながら、エースは自身もその手摺りに跨った。
「!?お、落ちる落ちる落ちる」
「落ちねえよ、大丈夫だ」
安心しろ、と呟く、すぐ隣にエースの体温を感じ、ユキは俯く。そんなユキの横髪を掬い、耳へかける。
その冷えた耳たぶへ触れると、びくりと反応するユキに、エースはじっと視線を向ける。
「・・・?」
そんなエースの視線を感じてか、ゆっくりとエースの顔を伺うユキ。
「・・・・」
「・・・・エース?」
「・・・・・いや・・・・うん・・・やるぞ?」
「・・開けるのって・・・・痛い・・?」
「!・・・・」
こちらを見上げて言うユキに、エースは手で顔を覆った。
「・・・・こいつ・・・マジか・・・・」
「え・・・?」
「あー、ん、わかった、大丈夫、すぐ済むぞー」
かちゃかちゃとセットするエースは投げやりにそう言う。一方、ユキはユキで、ピアスを開けるなど考えたこともなかったので、少しの期待と、少しの恐怖にドキドキとその胸を高ねらせた。
よし、できた、とそのピアスを入れたピアッサーを手に、ユキの耳へ手を伸ばすエース。その熱い手が触れ、エースの吐息がかかることに、ユキはぎくりとその体を固めた。
近い・・・声が・・息が・・・っ
エースの低く、落ち着いた声が耳にかかるのを意識し、ユキはバチンッといった音を聞き逃す。