第43章 一目惚れ
「っエース?」
落ちたら下は川だ。しかも割と高い。エースの突然の行動にびっくりしながら、ユキは自身を支える、腰に回された腕に安心しながら、目の前の広い胸に手をかける。あまり高くない手摺りだからか、その目線は同じくらいだ。ランタンの灯りに包まれる2人は、じっと見つめ合う。
「・・・なぁユキ、オヤジの船で過ごすの、楽しいか?」
「!・・・うん!とっても!」
「そうか・・・それならよかった」
ニシシと笑うエースに、ユキも吊られて笑みを浮かべる。そんなユキを見て、今日一日、共に過ごしたその顔が綻ぶのを何度も見たエースは、じっとユキの顔を見つめる。
「・・・よく笑うようになったな」
「!・・・・だって、楽しいから」
少し照れたように言うユキの頬に手を当てる。エースに向ける笑顔と、白ひげのクルーに向ける笑顔はかなり違う。しかし、それに気づいているのは、こいつの過去を話した奴らだけ。幸せそうに、花が咲いたように笑うこいつの笑顔を、まだ皆知らない。
こいつは、笑顔を作るのが上手いから、懐いてないやつにも、懐いているような笑顔を向ける。先程のハリネズミは我ながら見事な言い当てである。まだまだその針をしまうことをしない女に、少し苦笑しながら話す。
「俺以外にも、そうやって笑ってやれば、あいつらも喜ぶぞ?」
「・・・・・・・・」
「ま、ゆっくり慣れていきゃいい・・・・それに、お前の素の笑顔を見れるのが俺だけってのも、嬉しいしな!」
「!・・・・・エースって・・・そう言うこと、色んな女の人に言ってるんだろうね・・・」
赤くなった頬を隠すように言うユキに、エースはニッと笑みを浮かべた。
「さぁ、それはお前の意見だろ。俺は割と一途な方だ」
「!」
ボンっとその顔を赤くさせたユキに、ハハッと笑声をあげるエースは、そうだ!と思い出したかのように先程買ったピアスを取り出した。