第42章 招き猫とハリネズミ
少し透けた薄い赤色の石の中に、さらに深い赤色の石が入っていて、なんとも幻想的である。
そんなユキの視線を追って、エースはそれに目を向けた。
そして、じっとそれを見つめるユキの横髪を、そっと耳にかける。その奇行にびっくりしたユキは、バッと耳を隠すように手を持っていき、頬を染めエースを見上げた。
「!?」
「・・・開けてねぇの?耳」
「え・・・ああ、うん、開ける機会もなかったし」
少し逡巡したエースは、ユキに笑顔で言い放つ。
「開けるか?」
「え?」
「・・・それ、気に入ったんだろ?」
顎で示すそれとは、先ほどユキの見ていたあの赤い石で。それはピアス用に穴を開けないとつけられないピアスだ。
「や!大丈夫!アクセサリーなんて持ってても無くしちゃうし、似合わないし・・・」
「いいだろ、女なんだからアクセサリーつけてても。つか、つけてる方が俺は好きだ。
・・・・・な、つけろよ。その色、似合うと思うぜ」
「!」
そう言われてしまえばもう、ユキに断る理由はなくなるもので。その真っ赤な深い赤色が、エースの炎の色みたいで目に止まったなんて今さら言い出せない。しかし、一目で気に入ってしまったのも事実で、何も言い返さないユキを見て、エースはそれを手に取った。
「おやじ、ピアッサーみてぇなんあるか?それもくれ。あとこれも」
「ほお、お客さんお目が高いね。これはこの島自慢の石でね・・夜になると灯が灯るんだ。その深い赤色の石が、燃えているように。ここでしか手に入らないんだよ」
「そうか、そりゃいいもん見つけたな、ユキ!」