第42章 招き猫とハリネズミ
「フフフッ!だってエース、面白いんだもん」
「お前な!・・・ったくよー結局何がいんだよ」
「ええーそうだなー・・・・これ、かな」
そうして指さしたのは、フランスパン。
「・・・ユキ・・・お前・・・・・・・」
少しの沈黙ののち、ブハッと吹き出したエースは、ユキの頭に手を乗せる。
「おっまえ、あいつらの特徴掴みすぎだろっ!」
「だって、個性豊かな人たちなんだもの・・フフッ」
「じゃあよ、俺は?」
「んー、エースと言ったらやっぱり、これかなぁ」
そう言って棚の上から1つを選び、手に取ったユキ。その手の中にあるものを見て、エースは首を傾げる。てっきり、その隣にある炎の描かれた貯金箱を取ると思っていたから、少し驚く。
「なんでそれなんだ?・・・俺って猫っぽいか?」
「・・・フフッ、猫か犬かで言うと、猫だけど、これは招き猫っていうの」
「まねきねこー?」
小判を持つその猫を、エースはマジマジと見つめる。
「うん、お店の商売とかするときに、この招き猫を置いておくと幸運が入ってくるんだって。幸運の招き猫って言われるようになったのはそれがきっかけだったんだけど。私にとってエースは、幸運の招き猫みたいな存在だなって・・・だって、エースと出会って、エースが見せてくれる世界は全部、幸運がかかったみたいにキラキラしてるから!」
「!」
目を輝かせながら理由を言うユキに、エースは目を見開いた。今まで、疫病神や、鬼の子などと言われ育ってきたエースにとって、そんな良いものとしての喩えられ方をしたのは初めてで、どう反応していいかわからず、俯く。
ユキに動揺しているのを隠そうと、下を向いた瞬間に目に入ったそれを手に取り、強引に話を変える。
「っお前はこんな感じだよな!」