第42章 招き猫とハリネズミ
「あ、起きた?ほら、顔拭いて」
ご飯粒まみれのその顔にお手拭きを渡す。それを無言で受け取り、エースはじっとユキを見る。
ニコニコと、美味しそうにデザートを頬張るその姿に、よしっと立ち上がる。
「さ、そろそろ行くか!もう、日も暮れた!」
「ん、お会計すましてくるから、待っててね」
そう言って立ち上がったユキの手を掴む。少しの札をテーブルの上に置き、掴んだ手を引っ張る。
「男といるときに財布なんか出すんじゃねぇよ」
「え・・・でも、私もちゃんと稼いでるよ?そりゃ、エースよりも少ないけど・・・サッチさんが働いたからって今日お金渡してくれたもの!」
「そのサッチから、お前が受け取らねぇ金を俺が預かってんだ」
「!」
「全く、ちゃんと仕事してんだから貰えるもんは受け取ってやれっつーの」
困ったように今朝エースの元へ、受け取らなかったユキの給料分をエースに渡してきたサッチを思い出す。
「・・・・だって、多いと思ったから・・・まだ私の力じゃあんなにもらえない」
「フーン・・・・じゃ、貰えるって思えるくらいに早くなれよ」
「・・・うん!」
当分、サッチからユキの受け取らない金が回って来そうだな・・と思いエースは貯金箱を買っておこうとその場をくるりと半回転した。
「・・・エース?どこ行くの?」
「んーいや、店が閉まる前によ、なんか見ようかと思って」
ユキの手を引きながら、前をスタスタと歩くエースに、その足が先ほどよりもゆったりなものになっていることに気づく。
「・・・・」
自分の歩幅に合わせて歩いてくれていることに、ユキは胸の奥がくすぐったいような気持ちになった。