第42章 招き猫とハリネズミ
ガチャガチャガチャ、と毎度のことながらの食べっぷりにユキは顔を綻ばせる。
そんなユキに、食べねえのか?とエースは尋ねる。
「食べてる食べてる」
「全然減ってねぇじゃねぇか」
「エースと一緒のスピードで食べたら死んじゃうかなー」
「ふーん?・・グガァ・・・」
ガシャンっとそのまま皿に突っ伏すのを見て、ユキは苦笑いを浮かべる。
食べながら寝る癖だけはどうにもならないらしい。それを見たレストランの店主が汗をかきながら出てくる。
「どうされましたっ!?」
「あーいえ、寝てるだけなんで、気になさらないでください」
ハハ、と笑いながら言うユキに、寝てる・・?と不審な表情をした店主は、とりあえず死んではいないことにホッとした。
「すみません、驚かせてしまって・・・癖なんです、彼、美味しいものを食べてる途中に寝ちゃうんですって・・びっくりしますよね」
「ハハハ、それは嬉しい褒め言葉ですよ、我ら料理人にとっては・・・・本日は彼とデートですか?」
「え!?いや__」
「なんとも可愛らしいカップルだ。そうだ、知ってます?この街は歩いて見るのを一興ですが、あの大きなホテルに泊まって上から眺める景色も最高なんです」
ぜひ、今夜の宿が決まっていなかったら、行ってみてくださいね、と人の良さそうな笑みを向けられ、ユキは否定するよりもそのホテルからの眺めを想像し、胸を踊らせた。
「そうなんですか・・!高いところから眺めるの、好きなんですよね・・!」
「フフ、楽しんでいってください」
にっこりと店主の去る姿を見届けると、隣から顔をあげる音がする。