第40章 華麗な蹴り
その瞬間、その場の空気が止まり、異変が起きた。ユキの名を呼んだナースは、目の前でまたユキに襲いかかる男を見て、先程同様にユキの名を呼んだ。
え、とその不可解さに誰かが首を傾げた。
そんな中、当の本人ユキは、結局能力を使っても5秒では意味がないことを悟り、刺される、と目を瞑った瞬間、何かがナイフを振りかざした男を吹き飛ばした。
「・・・ぐァっ!!!!」
「「!」」
「ったく、能力は使うなって言ったろ、ユキ」
宙から現れその勢いのまま蹴りを繰り出した男は、その場で呆れたようにユキの前におり立つ。
「エース!!!」
「「「エース隊長!!!!!」」」
頼もしい存在が来てくれたと、その場はわっと沸いた。
そんな中、エースにいやぁ、と煮え切らない返事を返すユキ。
「あのままじゃあ切られてたし・・・・・まぁ能力使ってもエースが来てくれなかったら刺されてたね、あはは」
「あははじゃねぇっつの、ったく、ドリーが近くにいた俺に知らせてくれたからよかったものの」
「ドリー?」
ああ、あの宴の時絡んできた妙な好青年か、と呟くユキに、エースはコツンとその頭を叩く。
「お前、早速俺との約束破りやがってよ」
「あー・・ごめんね?」
「・・・・まぁ、能力使ってなかったら間に合ってなかったろうし・・」
「うん、だから、助けてくれてありがとう、エース」
煮え切らない表情のエースに、ユキはにっこりと笑顔を向ける。