第6章 強くなる
「おい、そろそろ行くぞ」
すでに鎮火した街を見下ろし、エースは隣で立ち尽くす少年に目を向けた。
「・・・・・どこに。僕の帰る場所は、今、奪われたよ」
虚な瞳を向けてくる少年に、エースは手を差し伸べた。
「探そう。お前が生きていく街を。」
「・・・・おじさん、助けてって、言ってたんだ」
エースの差し出した手を見ながら、その少年は呟いた。
「助けて、あげられなかったんだ」
「・・・・俺のことを、助けてくれたじゃねぇか」
パッとこちらを見上げた少年の顔に、やっぱりか、と確信する。
「お前、なんかの実食っただろ?」
「・・・・・うん。でも、役に立たなかった」
俯きながらぽつりとこぼす少年。エースはそんな少年の顔をガシッと掴み、上を向かせる。そして、言い聞かせるように、ゆっくりと言う。
「なら、お前が強くなれ。こんな思い2度としたく無いのなら、強くなって、守ってみせろ」
な?と笑顔で尋ねると、こくり、と少しだけ力の宿った瞳で見返しながら頷いた。
エースは何故か既視感を覚えた。
先程までの違和感ではなく、どこかで同じようなことをしたような、この瞳をどこかで見たような、そう思いながらも、少年を連れてエースは船へと帰路を急いだ。
後ろで、少年が黙黙と作っていた『おじさん』の墓が、少年の旅立ちを送り届けていた。