第39章 着せ替え人形
「や、え!?いや、そんな、そういうことはありませんっ」
必死にブンブンと顔の前で両手を振るユキ。
「何ごまかしてるのよー、あんな孤島に男女が2人っきり、そんなことない方がおかしいわよ?」
ニヤニヤとそんなユキを眺めるナースは、全くユキの否定を信じていない。
「・・・ほんと、そーいうのないですってば!それに・・・そういうことは好きな人とするものでしょう?私にとって、エースは恩人です。だから・・・恋人ではないですし、そういったこともしてません」
少し落ち着きを取り戻しながら、笑顔でそう言うユキに、今度はナースたちが驚いた。
「・・・え!?本当に何もなかったの!?」
「聞けば、1つ屋根の下で暮らしてたんでしょう!?」
「本当にエース隊長、何もしてこなかったの!?」
「・・・・はい、エースも好きな人としたいでしょうし。私では満足できませんよ」
「「「・・・」」」
ふふっと笑いながらそう言うユキに、あんぐりとその綺麗な顔を崩すナースたち。付き合っていなくてもそういうことはするものだ、という知識はないらしい。つまり、エースは1週間まるまる、生き地獄を味わったということだ。
それに気づき、ナースはゴホンッと咳払いをする。
「ちなみにだけど・・・ユキ。経験人数は・・?」
「・・・したこと、ないです」
カァと頬を染めるユキに、完全に空いた口の塞がらないナースたち。
ここまで純粋な子であったとは。話に聞いた通りの女とは全く似ても似つかない。
彼女らが聞いたユキという人物は、エース隊長を落としてきた女、白ひげやマルコに喧嘩を売った女、肝の座った女、などと、どんな経験豊富で傲慢な女なのかと思っていたが。。。
目の前で恥ずかしそうにするその少女は、何も知らない無垢そのものであった。