第39章 着せ替え人形
「ね、こーいうのはどう?」
「バカね!ユキにはもっと可愛らしい方がが似合うわよっ」
「じゃあこれ?」
「いいわねーー!」
さ、着てきなさい、と問答無用で渡された、大量の服。それを持つだけで目の前が見えなくなったユキを試着室に押し込むナースたちは、それはそれは楽しそうだ。
ユキ自身、あまり同性の人とこうして話す機会がないため、そのテンションに気後れする。
1つずつ着て見せていくユキに、キャァ!かわいいっと騒ぎ立てるナースたちに、まるで着せ替え人形になったみたいだ、とひとり遠い目をするユキ。
ようやく全て着終わり、さてどれにしようかと迷っていると、それら全てをレジに持っていこうとするナースに待ったをかけるユキ。
「ちょ、私そんなに買っても着る機会もないですし、お金もそんなに持ってないです!」
「・・・バカねー、女は着飾るのが仕事よ?それにこれだけな訳ないじゃない、まだまだいくわよ〜〜〜!」
「それに、お金のことなら気にしないで?」
エース隊長から財布、預かってるから!とチラリと見せるそれは確かにエースのもので。
「やるわね、エース隊長!女の買い物のために財布まるまる渡すなんてっ。いや〜無頓着なのかもしくは・・・」
ちらっとユキに謎の視線を向けてくるナースたち。
「い、いや、尚更使えませんよっ!エースのお金でなんてっ」
まだ反対するユキに、1人のナースが、いい?ユキ?とずいと顔を近づけてきた。
「男が出すお金に遠慮は無用!・・・それに、ここで全く使わなかったら、エース隊長に失礼ってものよ?だからね、エース隊長のお金でエース隊長のために着飾りなさい!!」
失礼、そう言われてしまえば何も言えないユキ。完全にユキの負けである。押しだまるユキを横目に、ナースが先ほどの服をレジに渡しお金を払う。