第36章 笑顔
無人島で世間話程度にしたたわいもない話を覚えていて、他のテーブルには置かれていないそれは、間違いなくエースのためだけに作られたもので。それに心の奥が温かくなり、素直に喜ぶエースは、ニカッと笑った。
「ありがとなっユキ!スッゲー嬉しい!!」
「!」
ユキは久しぶりに見るその屈託のない太陽のような笑顔に、どきりと心臓が跳ねた。
そこで気づく。そういえば、最近慣れることに忙しくあまりエースと話せていなかったことに。
サッチがどうせなら持って行って、ついでに昼飯も一緒に食べて来い、とユキを追い出した意味がやっとわかった。
「・・・そっか、私、寂しかったのか」
「?」
「ここ数日エースと話せなくて、エースの笑顔が見れなくて、寂しかったの」
「!」
サッチが気を使ってくれたことに感謝し、私もご飯とってくるから一緒に食べよう、と微笑むユキ。
パタパタと去っていくユキに、エースは無言でテーブルに突っ伏し、テンガロンハットを深く被った。そこから覗く耳は真っ赤である。