第36章 笑顔
それを少し離れたところから見守るサッチは、隣でコーヒーを啜るマルコの背中をバシバシと叩く。
「何あの甘酸っぱい雰囲気!ねぇもう可愛すぎるんだけどっ!!ユキちゃんの可愛さにやられたエース、まじでウケるっ」
悶えるサッチに、マルコも少し笑っている。
「くくっ、あの火拳のエースも、ユキにゃあ肩なしだねぃ」
「いやぁ、あの素直さにはどんな男もやられちまうって!俺ももうメロメロっ」
「きもいよぃ。エースに燃やされるぞ」
己の両肩を抱きくねくねとするサッチに、軽口を叩くマルコ。そんなマルコに、チッチッチと人差し指を左右に揺らす。
「まだ誰のもんでもねぇんだろ?」
「!・・・よく気づいたねぃ」
「そりゃあ、ユキちゃんのあの鈍感っぷり!エースも苦労するなこりゃ!」
そう笑いとばすサッチに、まさかお前、と眉を寄せる。その反応に、サッチはキラリ、とその目を輝かせた。
「そう、そのまさか・・・・・なーんて!俺があと10歳若けりゃエースなんてこてんぱんにして奪ってやるのによー」
残念だ、首を振るサッチに、このヤロウと殺意が湧くマルコ。一瞬本気で兄弟たちの血を見ることになるかと思った。
「・・・ま、気長に見守っていくよぃ」
「・・・んーすでにユキちゃんの心には1人しかいないみたいだけどなぁ」
「自覚するのは一体いつになるのやらねぃ」