第34章 凶器
その日、ユキの甘党が白ひげの海賊団を瀕死に追いやったのは、言うまでもない。
食堂にて吹き出されたその激甘カレーを、料理長であるサッチに無理やり水で流し込まされる屈強な男達の顔は、それはもう酷いものだった。
「あのユキちゃんが、俺たちのためにって作ってくれた、善意の塊だ・・!!食わなきゃ殺すぞてめェら・・・!!女の子の料理は最後まで食いやがれ・・!!」
ぎらり、とその双眸に殺気を光らせたサッチに歯向かう者はおらず、大量の水と共に流し込まれたその激甘カレーは、サッチ公認のモビーで毎月恒例の行事になった。
エースは1人、食堂にて起こった悲劇を見て頬を引き攣らせ、その場から立ち去ろうとする。しかし、一歩早くその退路を防いだマルコにより、食堂へと足を踏み入れる。
そうして盛り付けられたそのカレーと共についてきたユキの笑顔を見て、席に着く。恐る恐る口に運び、そのこの世のものとも思えぬ激甘さに吐きそうになるのを堪え、ゴクリと飲み込んだ。
「・・・・エース・・・・・お前、これ、知ってたのかよい」
「・・・・いや、砂糖さえ使わなかったよ、うめぇんだよ」
げんなりとした顔を覆うその手の中から、エースはニコニコと満足そうにそのカレーを頬張る姿を見る。
「嬉しそうにしやがって・・・」
ガツガツガツ、と一気に全て流し込むように食べたエースは、最後に水を大量に飲み、ガタンと早々にその場から立ち去った。