第5章 少年
「!!!馬鹿野郎!!!!!」
庇われたと気づきすぐにエースはその子供を助ける。
「何やってんだ!!」
慌ててその細い手首を掴み、持ってきた水をかけて火を消す。
痛みに一瞬顔を歪ませたそのガキは、すぐに俺の手を振り払うとまた駆け出した。
「おじさん!」
そう声をかけるのを見て・・・知り合いか、とようやく気づく。先程の蒼白な顔も、知り合いが焼かれているのを見たからであろう。
「待ってて、今助けるから!」
そう言ってまた火だるまの男に手を差し伸べようとするガキを、腕を伸ばして止める。
「おい待て!やめろ!もう助からねぇ!!」
すでに声を上げることすらできない様子で、明らかに手遅れだとわかる。
「っ!!離せ!!!おじさん!僕が助けるから!!!離せよ!!!」
必死にエースの腕の中から逃れようとするガキを、エースは静かに見つめた。・・・あれはきっと、家族か何かだろう。言い切れない何かを抱えながら、島唯一の生存者であろうこの少年を押さえつける。
「おじさん!!!!・・・・!!!!危ないっ!!!!!」
子供がそう呟くとともに、上から何かが降ってくるのを感じ、エースはその少年を抱え込んだまま後ろに飛び移った・・・・はずだった。
・・・・また、だ。また、何かが起きた。
エースが困惑していると、力が緩んだのを見計らい、エースの腕の中から抜け出したそいつは駆け出した。
そして、叫ぶ。
「避けろ!!!」
すでに炭になりつつあるそれを担ぎ、その少年はエースに向かってそう言った。
ハッとしたエースは、先ほどから起こる違和感を明確に感じ取りながらも、上から落ちてくる瓦礫を避けた。
・・・・どういうことだ??
さっき、俺はあいつと一緒にこの瓦礫を避けようとしたはずだ。なのに、おかしい。
何より、1番おかしいのはあの少年だ。まるで、こうなることがわかっているかのように動く。さっきは俺を庇い、今度は男を庇った。
・・・・まるで、ほんの少し時が戻ったかのように。
エースは自分の考えに、いや、そんなわけ・・・と頭を振ると、さらに崩れていく瓦礫を避けながら、少年とその少年の抱き抱える男を抱え、その場から離れる。