第5章 少年
誰かいるかーーーー!?
そう叫びながらエースは走り続ける。色んなところで燃え盛る人々の叫び声が上がる。すでに黒焦げになるまで焼かれ尽くした、人であったもの、それらを横目に、エースはさらに叫んだ。
「生きてる奴はいねぇか!!!!!!」
その叫び声は、あちこちで上がる人々の声にかき消された。
それでも、エースは諦めずに走り続けた。誰か、生き残りがいるはずだ。そんな希望を持って。
しばらくすると、向こう側からタタタッと何かがかけてくる音がして、エースは生存者か!とそちらに足を向ける。
向こうから走ってきたのは、見たところ15、6のガキだった。必死に炎から逃れるそいつは、俺の前までくるとぴたりと立ち止まった。
はぁ、はぁ、と荒い息遣いのまま、俺の後ろを見て固まった。血の気が一気に引いたかのような表情に、なんだ?と後ろを振り向くと・・・。
「助けてくれェェェェ!!!」
そう言いながらこちらに向かってくる、火だるまになった男。
エースは舌打ちをしながら、その男の炎を消そうとする、その瞬間。
「危ないっ!!!!」
ガキが叫んだと思えば、パッと情景が変わった。目の前まで来ていた火だるまの男が消え、さらに後ろにいたはずのさっきのガキまでいない。
何かが起きた。明らかに、何か、おかしい。
違和感を感じながら、エースはまた、向こうから掛けてくる足音を聞き、後ろから火だるまの男がまた襲いかかってきた。
そのことに既視感を覚え、襲いかかってきた男をまずどうにかしようとした瞬間、後ろからドンッと思い切り押された。
そんなことをする人物は1人しかいない。・・・・さっきのガキだ。
まさかの不意打ちにエースは一瞬身を硬くしたが、すぐに空中で半回転し地面に足をついた。一瞬のうち、見えた光景に、エースは目を見開いた。
そこには、エースを突き飛ばしたであろうさっきの子供が、火だるまの男と衝突したところであった。ジュウッと肌の焼ける音が聞こえてくる。