第31章 宴の後の静かな覚悟
歓迎会と称しての宴も、あちこちに転がる酔い潰れた者たちを見るとそろそろ収束が見えてきた。
少し前まではいたオヤジも、他の奴らもそれぞれ自室に戻り眠っている。その辺りに転がる男たちを踏まないようマルコは1人海を眺めていた。さっきまで一緒だったサッチは、眠いと言いながらも片付け始めている。
電気のつかない海は真っ暗で、空からきらきらと明るい星が電灯代わりになっている。マルコは揺れる海を眺める中、後ろに誰かが立つ気配を感じ、振り向かず声をかける。
「・・・・まだ寝てなかったのかよぃ。エース、ユキ」
「・・・・・頼みがある」
そう言ったエースの声が真剣味を浴びており、宴の雰囲気を持ってはいない。そういえば今回ほとんど参加してなかったな、と思いながらゆっくりと振り返る。
そこには、エースといつもはそこにあるオレンジ色のトレードマークを被らされたユキがいた。
「で・・・なんの用だぃ」
そのハットの意味を知っているのはきっと、ユキ以外の全員。虫除けに使うとはな、とサッチが笑っていたのを思い出しながらもそのハットから視線をずらす。
「・・・・昼間話した通り、ユキの印を焼く。治療してくれ」
「!・・・えらく早ェじゃねぇか」
「いや、遅いくらいだ。ほんとはもっと早くに消してやりたかったんだがよ、俺じゃまた熱出させちまうと思って、お前と会ってからって決めてたんだ」
「・・・いいのか?ユキ。一生消えない火傷の跡が残るってことだよぃ」
「・・・・・・・あいつの所有物である印がある限り、自由にはなれない。奴隷とは、そういうものです」
どうやら自分が思っていたよりも、深刻なようで。ユキのさっきまであった笑顔がなくなり、空虚なその瞳に気づき、マルコはエースと目を合わせ何を言うまでもなく船内に入っていく。