第30章 歓迎会
飲み終わり、ジョッキをガタンッとクルーたちの目の前に音を立てて置く。エースはテンガロンハットから覗かせる2つの双眸をスゥーと細める。
その目に怒りが宿っているのに気づき、部下たちは一気に青ざめる。
「・・・・オメェら、悪ふざけは、その辺にしとけ」
コクコク、と頷く部下を見て、エースは自身の下にいるユキの頭にテンガロンハットを被せる。
「お前も、飲めねぇんだったらそう言え」
「う・・・・だって」
「だってじゃねぇ、いいな?」
はぁい、と短く返事をするユキを見下ろし、仲良くやれよ、と言い残し去っていくエース。
「・・・・おー怖ェ」
ニヤニヤと笑みを浮かべながら横を通り過ぎるエースに、サッチは呟く。
「・・一緒にいてやればいいんじゃねぇのかよぃ」
「・・・・・・俺が一緒にいると、馴染めねぇだろ」
「「・・・・」」
去っていくエースに、うししと笑いを堪えるサッチ。
「いやぁ、愛されてんなぁ、ユキちゃん」
「・・・・」
確かに、エースとユキは1週間あの島で過ごしたからか、他を寄せ付けない雰囲気が2人にはあった。エースから先ほど聞いた話じゃ、そうなるのも無理はない。が、宴の場でもエースがユキの側にピッタリとくっついていては話しかけづらい。それをエースも気づいていたのだ。
せっかくの宴、クルーと仲良くなってほしいという願いからか、いつもは宴の中心にいるようなヤツが、ずっとユキに目を光らせながら静かに飲んでいる。
その姿が異様で、オヤジも笑っていた。
だが・・・・エースの去っていった方角を見つめるユキは、少し寂しそうにしていることに、気づいているのか否か。
ハァ、とため息を吐くマルコはまだ固まるその空気に入り、サッチにジュースを持って来させる。
当分は面倒見てやるか、と長男心が動く。