第30章 歓迎会
カンっとジョッキ同士がぶつかり合い、すぐにその中身がなくなっていくことに目を丸くするユキだが、ドリーがそれに気づいてユキのジョッキをその口元へ押し付ける。
「ほら、乾杯のあとは一気飲みが海賊の流儀だ!飲んでくれよっ」
ニッと先ほどと同じような好青年の笑顔を向けられ、さらに周りのクルーたちからも好奇の目を向けられ悩むユキは、好意であると信じそのジョッキの中身を煽ろうとした、瞬間。
にゅっと後ろから出てきた逞しい腕がそれをユキから奪い取り、ゴクゴク、と一気に飲んでしまう。誰か、など後ろを見なくともその体温の高さでわかる。
一方、ユキが絡まれているのに気づいていたマルコとサッチは、止めるべきか悩んでいた。悪意がないのは見て取れるが、あのジョッキの中身は間違いなく酒だ。サッチが気を効かせてジュースにしたのも、飲めないだろうと思ったからだった。その予想通り、ユキは初めそのジョッキに口をつけた時に顔を顰めていた。それに気づいていたのだ。
飲めない女に酒を勧めるクルーたちに、ユキは一気飲みを期待されそれをやろうとした際、流石に止めるかとマルコが動いた時。
2人の横を静かに通り過ぎる男がいた。
___エースだ。
この宴中あまり目立たないと思っていたら、どうやら遠くから見張って(見守って)いたみたいだ。お、とサッチが気づいた時には、もうすでにユキの背後からそのジョッキを奪い取り、中身を飲み干していた。