第30章 歓迎会
「ほぉ、こりゃすげぇ。ホントに海の色をしてやがる」
「っ!?」
突然出てきた見知らぬ顔に、ユキはびっくりして後ずさる。が、後ろにも人がいたようでドンっとぶつかってしまい振り返る。
するとそこには、待ってましたと言わんばかりのクルーたちがユキを囲んでいた。
こいつがエース隊長の・・・
こんなちっこいのがほんとにオヤジに?
目の色が青いっ!
口々に言うクルーたちに囲まれ、ユキはどうしようかと視線を走らせるが、先ほどユキを取り囲んでいた隊長たちは各々好きに飲んでいるようで、相変わらずエースはユキのそばにはいない。
初め話しかけてきた男が、戸惑うユキの肩を組み、ジョッキを渡してくる。
「俺、ドリーってんだ!その瞳に興味があってな!ユキ!」
ニット笑うその顔は、まだ少しあとげないもので、比較的年齢層の高いこの船では珍しい若者であった。
この海の色、と呼ばれる瞳を持つユキは、そのせいで天竜人に売られたので、あまりこの瞳に興味を持ってほしくはないのだが、すぐににっこりと笑って差し出されたジョッキを口に運ぶ。
「・・・・っ」
一瞬だけその顔を渋らせたユキは、悟られないようその顔に笑顔を貼り付け、ドリーと名乗る青年によろしく、と伝える。
ドリーはじっくりと先ほどよりも真剣にユキの瞳を覗き込んだ。
「・・・・・え、と、ドリーさん?」
困惑するユキに、周りのクルーたちが乾杯を求めてくる。
「おいおいドリー!そんな脅かすな、ユキ!こいつは変なやつなんだ、気にしないでくれ!それより、お前のあの迫力っ!俺は痺れたねっ」
「おう俺もだっ!オヤジの覇気に真正面からぶつかってく女なんて、数知れてるぞ!」
「そんなユキちゃんに、」
「「「「「かんぱーーい!!!」」」」」
そう高々と上げられるジョッキに、ユキもおずおずとその手元にあるジョッキを持ち上げた。