第28章 海賊の流儀
ユキ1人、その大きさに、偉大さに、威圧感に驚き体を固めた。
___あれが世界最強の男、白ひげ
懐かしそうに目を細めたのには、誰も気づかなかった。
ちら、とその大きな体の上から見下ろされ、ユキは負けずと見つめ返す。
「親父っ」
「オヤジっ!」
さまざまなところから聞こえてくる、『親父』という愛称。
「エースがまたバカなこと言い出してよっ」
「バカってなんだよっ!」
「バカ以外なんだってんだよぃ!」
「グララララ、まぁエース、無事でよかった。心配かけさせやがって」
再び始まる兄妹喧嘩を見ながら、白ひげは笑い飛ばす。大きな人だ。エースを見るその目が優しいことに気づいたユキは、ふと頬が緩むのを感じた。
「で?なんだこの娘っ子は」
ギロッと、真正面から睨みつけられることに、ユキは先ほどよりも威圧感を感じ後ろに一歩下がりかけた瞬間、トンッとその背が何かにぶつかり、後ろを振り向く前にそれの正体を知る。
「俺が気に入った女だ!!!親父、この船に乗せたい。許可してくれ」
そう後ろから叫ぶエースに、先ほど抜けた力をまた足に入れ、倒れないようにグッと姿勢を正す。エースがさりげなく支えてくれていることに感謝し、自身の足で立つ。
「気に入った?何言ってやがるエース、ここは新世界。こんな娘っ子に何ができるってんだあ!」
ジロリとエースとユキを睨む白ひげの目に、先程のエースを見る優しさはない。
はっきりと反対されたことにもめげず、エースはユキの肩に手を起き、さらに口を開いた。
「こいつはっ!芯のある女だ!!それにオヤジィッ!!!!」
肩に置いた手を引き寄せるエースによって体が傾くユキは、ガッと首に回ってきたその逞しい腕に抱き寄せられる。
「海賊が目の前にある欲しいモンを、なんで我慢する必要があるっ?」
ピリ、とした緊張感の中、船が揺れた。
その振動源が目の前の人であることにユキは呆気に取られる。
「グララララララッ!!」
愉快そうに笑うその姿に、後ろからもヒューヒューッ!と野次が飛んでくる。
「ナマ言いやがって、ハナっタレがあ!!グラララララッ!だがエース、人間と宝は全く違うもんだ、お前にそれを守りきる覚悟は、あんのかァ」
「あ___」
「私が守りますっ」