第2章 居場所=三ツ谷隆
一方で三ツ谷は合意の上での髪に触れることに感動していた
いつもは二つ結びにしていてキッチリしている髪も下ろしていたらドライヤーの風でフワフワと浮くくらいに軽いんだなぁと新しい発見に嬉しくなる
時折ドライヤーの風でふわりと自分の家のシャンプーなのに違う香りのようでドキリとする
(湯上がりの香りってヤバいな)
なんて10代の男の邪な考えなんてどんどん膨らむばかりで そんな考えを振り払うように三ツ谷はブンブンと頭を振った
「…何かお母さんの事を思い出しちゃった」
「ん?さんのお母さん?」
小さく呟いた言葉が聞こえたのか三ツ谷が聞き返してきた
「うん、あっ、亡くなった方のね こうやってお風呂に入った後にいつも乾かしてくれたの」
の母親はいつもの髪を楽しそうに乾かしていた 乾かしながら今日学校であった出来事などを報告し合うのが日課になっていた
はそれが何よりの楽しみで居心地のいい空間だった
「だから誰かに乾かしてもらうのは凄く久し振り」
「ははっ、ごめんなぁ乾かしてるのが俺なんかで」
そう冗談っぽく言う三ツ谷にはその言葉を否定した
「まさか!三ツ谷くんの乾かし方はその…優しいから」
「!じ…じゃあさんのお母さんにならって1日の出来事でもお互い話すか?」
の言葉に何だか気恥ずかしくなった三ツ谷は話題を変えようと彼女にそう提案した
「えつ!?楽しそう!するする!」
まさかこんなに乗ってくるとは思わなくてまた新たな面を見れた事に嬉しい気持ちが湧いた
「じゃあ、私からね、えとね…ー」
そう言って色々と話し出す彼女の姿に本当は凄くお喋りなんじゃないかと三ツ谷は思った
は三ツ谷が聞いてもいない事をどんどん話しだした
ただ家族の事は一切口にはしなかった