第9章 私はモブになりたい
「ふ…ふんっ!ちょっと突き飛ばしただけで痛がるなんてワザとらしい」
ワザとじゃないんだけどなぁ…それにワザとならもっと大げさに痛がる そしたら誰か助けに…
「おい、何してんだよ」
ほら、こんな風に…えっ!?
自分の想像していた事が現実になって思わず背後を思い切り見る
そこには昨日見た人物が慌てて駆け寄って来ていた
「え…不良…?」
突然現れた見慣れない格好の人物に姫野達は動揺を隠せなかった
「何があったかは分からないけど女の子の暴力は似合わないよ」
そう言ってにっこりと笑う少年 三ツ谷隆に「ち…違うもんっ!この子が勝手に転んだだけだもんっ」と顔を真っ赤にして言い訳をした
もっとマシな言い訳なかったのかなぁとぼーっと彼女達と三ツ谷さんを交互に見つめていると
バチっと三ツ谷さんと目が合った
「と…とにかく!今日みたいなことはもうしないでよねっ!」
そう言うと いたたまれなくなったのかバタバタと走って行ってしまった
ポツンと残されたは「じゃあ 私も…」と立ち上がろうと地面に手をついた瞬間 ピリっとした痛みがはしり 思わず「イタっ」と声を出してしまった
「ん?どっか怪我したのか?見せてみろよ」
の声にピクリと反応した三ツ谷はしゃがみ込みの手を取った
「あ〜…ちょっと擦り剥いてんじゃん」
「あっ、本当だ」
三ツ谷に手を取られて気が付いた 尻もちをついたときに手からついたからだろうか少しばかり手のひらに血が滲んでいた
「手当てしてやるから家に寄れよ」
「えっ!?いやいや!大丈夫ですっ!」
突然の三ツ谷からの申し出にはギョッとしながらブンブンと首を振った
「こういう小さな傷を甘く見てるとばい菌入るんだぞ」
そう言いながら立ち上がると くるっと向きを変えてスタスタと歩き出した
その後ろ姿をポカンと見ていたは再び くるっとコチラを振り向く三ツ谷がじーっと見つめられて何故だか無言の圧を感じた
これは…付いていくしかないかと覚悟を決めて立ち上がった