第9章 私はモブになりたい
カチャリとドアを開けると そこには心配そうな顔した女の人が立っていた
「ちゃん、お外で何かあったの?凄く慌てて帰ってきたけど…」
「…ううん、ママ ただ外が暑くて急いで帰ってきただけだよ」
「そう?熱中症になると大変だからね、ちゃんと麦茶でも飲んでね」
「ありがとうママ、ほら、もうすぐお仕事の時間でしょう?用意しないと」
目の前にいるのは私の今の母親だ
今の記憶と前世?の記憶が段々とハッキリしてきた
母は地元の病院の看護師をしており、父は鹿児島に単身赴任中だ
母は夜勤の仕事で疲れているのに毎回食事の支度をして家の仕事をして出掛ける
そして毎回仕事に行くときはを抱き締めて「行ってくるね 大好きよ」と言い残し出掛ける
とてもとても愛情の深い人だと思う
生前の記憶の中でのの両親とは真逆の愛情表現で少しむず痒くなった
生前の私はこんな風に抱きしめられたことも「大好き」だなんて言葉も掛けられた記憶さえない
寧ろ いない空気の様に扱われた
思い出すだけで心がギュッとなる