第8章 どんな君も=佐野万次郎
「いや…勢い良く飲み出すからお酒強いのかと思ってたよ」
「う〜ん、何度か一緒にお酒飲んだ事があるけどこんなにヘロヘロになってるのは初めて見たかな…ねぇ華蓮ちゃん」
瑠衣の言葉に華蓮は言葉を濁すように曖昧に笑った
確かに何度か友人達と飲むときも2人で飲むときも決して酔う様な事はなかったのに今日は一体どうしたというのだろうか
華蓮もまた普段と違うの様子に疑問を拭いきれなかったが暫く様子を見ようと考えた
その後、男子学生の方が門限があるからと8時過ぎには解散となった
「大学の寮も門限ってあるんだねぇ」
「そりゃあね、高校の寮みたいに厳しくはないけど門限はちゃんとあるよね」
地方から来る学生は大学が用意した寮で過ごしている
「あの、でも本当に送らなくてもいいの?送る時間くらいあるよ?女の子だけじゃ危ないでしょ?」
心配そうに聞いてくる男の子に「大丈夫大丈夫、バスも電車もすぐそこだから」と言って瑠衣がやんわりと断りを入れた
「そ…そう?じゃあまた学校で」
少し心配そうにチラリと後ろを振り返りながら帰路に着く彼らを見送った華蓮達は自分達も帰ろうとベンチでグテっとしているを見遣った
「さて、ワタシはをタクシーで送ってから帰るから瑠衣ちゃん達はどうする?」
「あっ、私達はバスが出てるから時間まで近くのカフェで待ってから帰ろうかなって」
「そっか、じゃあ少しだけを見てて?タクシー停めてくるから」
そう言うと華蓮は瑠衣達にを任せて道路側にタクシーを止めに行った
女の子同士でいる時の華蓮は率先してテキパキと行動するから男の人が苦手だという事は言われなきゃわからないくらいにしっかりしている
これを男の人の前でも出せたら苦労はしないのにと常々自分でも思っていた
華蓮はタクシーを呼び止めて運転手に「もう1人乗るので待ってて貰えますか?」と了承を得てくるりと向きを変えて戻ろうとするとそこには何やら見知らぬ人と揉めている瑠衣達の姿が目に飛び込んできた