第8章 どんな君も=佐野万次郎
運悪く今日に限って教授に呼び止められた
レポートの事で話があるから部屋に来てほしいとの事だった
は今日はマイキーと約束をしていたのでメールで一言『遅れる』と送った
あれ以来、突然来るのを辞めた代わりにマイキーは事前に連絡をする様になった
お陰で折角来てくれたのに先約があってマイキーがトボトボ帰る光景はなくなった
メールを送るとすぐに返事は返って来た
『大丈夫!待つのは得意だから!』
そうすぐに返って来て思わず小さく微笑んだ
なるべく早く終わらせよう そう思って
教授との話が終わったはマイキーが退屈そうに待っていないか心配になりながらも構内へと急いだ
いつも座って待っているベンチへと足を向けるとが近づくにつれてマイキーの明るい声が響いた
「わかるっ!」
「そうでしょう そうでしょう?」
そこには楽しそうに談笑するマイキーと華蓮の姿があった
その時は本当に純粋に華蓮が楽しそうに男の人と話をしている姿に嬉しさが込み上げた
あの日 華蓮とは大学に入学をして初めてのガイダンスの日 たまたま近くの席に座った 先生の説明を聞いている中 俯いて僅かに青くなっている顔が気になった
ガイダンスが終わり先生や生徒がバラバラと席を立つ中、彼女だけがじっと動かない事に余計に目がいってしまい思わず声を掛けてしまった
「あ…あの、大丈夫?」
そう声を掛けると肩がビクっと動き顔を上げた彼女の顔は驚くほど青白かった
「……き……」
「き?」
「…気持ち悪い…」
みるみる涙目になりながら口元を抑える姿には慌てて自分が羽織っていたジャケットを彼女の口元に持っていった
「我慢したらキツイから遠慮なく汚して!」
「え…でも…」
「大丈夫、それで楽になるなら安いものだよ」
「あ…ありが…うぷっ…」
暫くしたら彼女を保健室へと連れて行き、大丈夫だと確認したらすぐにその場を離れた
あまり側にいるときっと彼女が気まずくなってしまうから