第8章 どんな君も=佐野万次郎
後方から聞こえた女の子の声にエマとマイキーが振り向くと そこにはゾロゾロと男女数人が歩いてきた
「王子くん どうせまた人助けだ〜って飛び出したんでしょ」
言いながら茶髪のボブの女の子がスルリと王子と呼ばれた青年の腕に自分の腕を絡めると上目遣いで見上げた
「だって困ってたし」
別に気にしないように腕を絡められたまま青年はエマに「ねぇ?」と同意を求めた
「もう、そういう事を気軽にすると心配しちゃうんだから」
もう片方の腕に同じ様に腕を絡めるポニーテールの少女はいささか心配そうな表情を向けた
「おい、王子 羨ましいシチュエーションだな」
両手に花状態の青年に一緒に寄ってきた男たちが抗議の声を上げる
「そんなに僻むなら王子くんみたいにスマートになってみなさいよ」
「あの…お名前 王子さんなんですか?」
彼女達から発せられる名前にエマは首を傾げるように尋ねると
「あ〜違う違う、あだ名?みたいなモン?」
後ろにいた男の子がそう言うと「ほら『王子様』って感じだろ?」
と指をさすとエマは妙に納得した
見た目は王子さまそのものだ背はすらっと高く、白いロングコートが似合い髪の毛はサラサラの黒髪でなんといっても一際目立つのはその瞳の色だった
「ねぇ、何で『王子さま』なの?」
今までだまって見ていたマイキーが突然口を挟んできた
「は?だから…「こんなにキレイなんだから『お姫様』だろ?」
「マ…マイキー?いきなり何言ってるの?」
急にトンチンカンな事を言い出すマイキーの袖をエマが慌てて引っ張る
「だってどーみても女じゃん」
マイキーの言葉に周りの空気がピシっと固まった
その空気を感じたのかマイキーは『ヤベ』というような顔をしてペロッと舌を出した