第8章 どんな君も=佐野万次郎
それから1週間が過ぎたが、エマは1度もあの時の青年に会うことはなかった
「絶対にエマが美化しすぎだって」
「違うし!ちゃんと王子さまみたいに助けてくれたんだもんっ!」
そう言い合いながら歩くのは信じてなさそうな顔をエマに向けている兄の佐野万次郎だ
「そんな王子さま王子さま言ってたらケンチンに言うぞ」
「酷いマイキー!」
思わずポカリとグーでマイキーを叩くとエマの前をあのときに見た白のコートが通り過ぎた
「あっ!白いコート!」
「え?」
思わず反射的に掴んでしまい、しまったという顔をエマはした
よく見ると顔も小さく整った顔をした青年だった
「あの…何か?」
何故掴まれたのか分からないような顔を向けられてエマは慌てて掴んでいた手をパッと話した
「あ…ごめんなさい!ウチ、あの時のお礼をちゃんといいたくて…」
「お礼…?あぁ、あの時の」
思い出したように顔が明るくなる姿にエマは「そうですそうです!」と頷いた
「あの時は本当に助かりました」
ペコリとお辞儀をするとニコッと青年は笑った
「いえいえ、何事もなくて良かった」
「あのっ、マフラーは改めてお返ししますね」
「ご丁寧にありがとう、だけどあのマフラーは君が貰って?とっても似合ってたから」
嫌味のない顔で言われてエマの顔がポッと赤くなった
「あ〜、王子くん また女の子誑かしてる」