第8章 どんな君も=佐野万次郎
ある日の事 エマこと佐野エマは学校の帰り道
見知らぬ男に声をかけられていた
「ねぇ 少しでいいからお茶に付き合ってよ」
「しつこい!ウチは早く帰って暖まりたいの」
あからさまに嫌そうな顔をしてるのにぐいぐいとくる男に嫌気がさした
季節は12月の寒空でエマは早く帰って暖を取りたいと思った矢先の出来事だった
「だから〜お店に入ったら暖かいよ」
先程からこの押し問答が数十分続いてそろそろ本気で怒りそうだ
「さっきからしつこい!」
これ以上は無駄だと思ったエマは返事を聞かずに相手の男の横を素通りしようとすると男は焦ったようにエマの腕を握ろうとした
「ちょっ…ちょっと待てよ!」
腕を握られてエマはゾワっとしたのか「ヤメてよ!」と言って振り払おうとしたらドンっと音がしていつの間にか男は壁に吹っ飛んでいた
飛び蹴りで男が吹っ飛んだと分かったのは目の前に白いロングコートがフワリと舞って背の高い青年が立っていたから
「あ…あの」
エマの呼び掛けにクルっと振り向いた青年はエマにニコリと笑った
「アレ、蹴って良かったんだよね?」
壁にもたれて目を回してる男を指さしながらはにかんだ
「助けてくれてありがとうごさいます」
慌ててペコリと頭を下げるエマに青年は「可愛い女の子が困ってたら助けるでしょ?」などと男前の事を言い放った
「か…かわ…ヘクショっ!」
青年の言葉に顔を赤くするが寒空の中、長時間いるとさすがに冷える
「あ、ごめんなさい」
ズズっと鼻を啜るエマに青年は自分が巻いていた黒のマフラーをクルっと外してエマに巻いた
「これでちょっとは寒さを凌げるから 風邪引かない内に帰った方がいいよ」
そう言ってニコリと笑うとそのままその場を去っていった
残されたエマはポカンと口を開けてただ見つめる事しか出来なかった
「…王子さまみたい…」
ポツリと呟いた言葉は冷たい空気に溶けていった