第7章 先手=松野千冬
「…それで千冬くん、それ私の」
「へ?」
が言いにくそうに指を指した視線の先にはワサビ味のクッキーなんて驚いて慌てて手に取った飲み物の缶があって それはが口にしていたココアだった
「わっ!!俺 全く見てなくて!」
どうりで口の中がコーヒーの甘さじゃなくて別の甘さのハズだ
全然気が付かなかったとはいえ人様の物を無断で飲んでしまった
「お…俺!買い直してきます!」
慌ててガタッと立ち上がった千冬には慌てて制した
「だ…大丈夫だからっ!…その代わりそっちをちょっとちょーだい?」
遠慮がちにが指さしたのは千冬が飲んでいたコーヒーで
「え?コレでいいんですか?」
コーヒーの缶をに渡すと僅かに嬉しそうな顔をした
「うん、コーヒーがいい」
言いながら缶を口元に持っていこうとする仕草に千冬は何も考えず渡してしまったが数秒遅れてハッと気が付く
これでが口を付けたら間接キスになってしまうのではないかと慌てた
「ちょっ…さん!待っ…」
コクリ
時すでに遅し コーヒーの甘い味がの喉を鳴らした
「え?何か不味かったかな?」
千冬の反応に慌てて缶を返すに冷や汗が流れた
「あ…いえ、今さらなんですけど俺が口を付けたもので嫌じゃないのかなぁって…」
最後の方は消え入りそうな声で言う千冬には小さく笑った
「まさか、嫌じゃないし それにそれを言うなら千冬くんもだよ?不本意とはいえ私の飲みかけ飲んだし」
の言葉に今更ながらにハッとした
不可抗力とはいえ先に間接キスをしてしまったのは千冬本人だった
「ここの所さ 折角私がお土産とかあげても喜んで食べてくれないんだよ〜?」
酷くない?と少し不満げなを見て千冬は場地が気を付けろと言っていたのはこのことなんだと悟った
「昔は喜んで食べてたのに」
きっと場地達はの前で格好悪い所を見られたくなくて喜んで食べてるフリして丸々飲み込んでたんだろう