第6章 距離の温度=羽宮一虎
そう言うと場地は千冬に「千冬ぅこの玉子焼きうめーぞ」と話題を変えた
「…圭介」
その場地の温かい言葉にの胸がキュウッと鳴った
何だかんだ言っていつも2人の事を考えてくれるのだ
「…そろそろ反省してんだろ、 入れてやれ」
口をモグモグと動かしながら言う場地には小さく頷くと小走りで入口に向かい鍵を開けた
「一虎?」
ヒョコっと顔だけ廊下に出してキョロキョロと一虎を探すように視線を彷徨わせたはドアの直ぐ側で蹲って俯いている一虎の姿を捉えた
「…反省してるなら一緒にご飯食べよう」
言いながら手を差し出すの声にゆっくりと顔を上げた一虎はまるでこの世の終わりみたいな表情をしていた
「でもまだ怒ってるだろう?」
小さな声で落ち込んだ様子でを見上げる姿はまるで怒られた後の犬のようだ
「…今回だけは圭介に免じて許してあげる…」
「?なんで場地なんだ?まぁいいや、朝飯 朝飯っ」
の言葉に首を傾げるも、一虎はコロっと切り替えるように勢い良く立ち上がると軽い足取りで室内へと戻った
この切り替えの早さは見習いたいものだ
「〜!この魚骨取って!」
「馬鹿かお前!骨くらい自分でしろっ」
「一虎くんっ何でもかんでもさんに頼ったら駄目ですよ!」
室内でギャアギャアと聞こえる声に僅かに苦笑するとも同じ様にパタパタと室内へと掛けて行った
「ーーはい、骨は大体取ったから」
「さすがっ!」
が骨を取った焼き魚の皿を一虎に出せば 嬉しそうに受け取って食べようとする
「さん、一虎くんに甘いですよ」
「お前それじゃあ『彼女』じゃなくて『母親』だろ」
一連の動きに千冬と場地は口々にそう口にする
「…っうぐぅ…」
2人の言葉にはぐっと押し黙る
た…確かにこのやり取りはそう見えなくもないけど昨日恋人らしくって話し合ったのに…
そう考えながらシュンっと項垂れるを一虎はじーっと見つめて口を開いた
「いいんだよ 俺達はこれで」