第5章 近くにいすぎて=場地圭介編
「2人の言いたい事は分かったから、ありがとな 俺達の事色々考えてくれて」
「ば…場地さぁん…」
ウルっと目を潤ませて圭介を見ている千冬に一虎は はぁっと小さくため息をつくと持っていたお椀の中に入っていた味噌汁をぐいっと飲み干した
「ほんじゃまっ…朝メシも食ったし行くかな」
お箸をテーブルに置くと片膝を立てながら立ち上がろうとする一虎に圭介は眉間に皺を寄せた
「あ?まだが食ってねーだろーが それに俺もまだ途中だ」
ゴソゴソと帰る支度をする一虎の後ろ姿に不機嫌そうに圭介は声を掛けた
「だから、俺達も色々と考えた結果だ 場地はとゆっくりしてから帰ってこいよ」
ヨイショっと肩にカバンを掛けた一虎はスタスタと部屋を出て行こうとする
「ちょっ!ちょっと待ってよ!一緒に帰ろうよ」
今までずっと黙って成り行きを見ていたは一虎の行動に慌てて追いかける
「大丈夫ですよ!一虎くんは俺が責任持って連れて帰りますから」
「えっ?千冬くんまで…」
背後から声が聞こえてが振り向くと千冬も同じ様にカバンを抱えてにこにこと笑っていた
「はぁ!?逆だし 俺が千冬を連れて帰るんだっての」
「…ハイハイ ソーデスネ」
一虎の言葉を棒読みの様に答えると千冬は圭介を見て ペコリと頭を下げた
「それじゃあ場地さん さん またお店で」
そう告げると声を掛ける間もなく扉がしまった
残された2人は僅かに顔を見合わせて この状況を処理しようと暫く無言で見つめ合ったが沈黙が耐えられなかったのか先に圭介が口を開いた
「…取り敢えず 朝メシ食べるか…」
「そうだね お腹空いちゃった」
圭介の向かい側に座ったはお腹を擦りながらはにかんだ
「おう だし巻き美味かった」
の様子に圭介は目を細めて笑った
2人で食べる朝ごはんなんて沢山あったのに今日は何となくむず痒い
だけど美味しい朝ごはんだった