第2章 居場所=三ツ谷隆
を抱いて外に出ると そのまま歩いて行こうとすると後ろからバタバタと足音がした
「三ツ谷先輩!!」
「まだ何か用?」
後ろから呼び止めたのは慌てて家から飛び出してきた香織であった
「今、その子を連れて行ったら後悔しますよ」
「後悔はもうしてるよ」
「!だ…だったら…」
「がこんな家にずっといたのを知らないでいた事に後悔してるよ」
もっと早く知っていればすぐにても何かアクションが出来たのに
こればっかりは後悔してもしきれない
「これからはずっと側で見ててやりたいんだ」
そう言いながら愛しそうにを見ながら目を細める三ツ谷にギリッと香織は唇を噛む
どう足掻いても自分に振り向いてくれないと悟ったはどうしても自分より劣ると勝手に思っているが幸せになることが許せなかった
「言っときますけど自宅から意識のない女を連れ出すなんて犯罪ですよ?」
こうなればあの女と不幸になれば少しは懲りるだろうと香織は三ツ谷に脅すような事を口にした
「別にいいよ、がこんな冷たい家にいなくていいなら」
は以前 三ツ谷の家を温かい家だと言った
きっとこの家はにとって冷たい家なんだろうと 今ならわかる
それならば連れ出してやりたいと思うのは当然だろう
「…それに犯罪云々言うならアンタらの方だろう?」
言いながらゴソゴソとの着ていた服のポケットから携帯を取り出す
「これ、ずっと録音のままなんだわ」
佐野家の家を出る時にエマが念の為にと言っての携帯の録音機能にしたままポケットに突っ込んでいたのだった
「篠崎さんの兄貴がを引っ叩いた音も全部入ってるんだろうな 胸くそ悪いけど」
そう言うと今度は自分のパンツに携帯を押し込んだ
「わ…私知らない!兄さんが勝手にやった事よ!」
必死に弁明する姿に三ツ谷は渇いた笑いを溢した
「…篠崎さんの言葉はもう届かないよ」
そう呟くとクルッと向きを変えて今度こそ その場を後にした
残された香織は1人ずっと叫んでいたらしい
その声は誰にも届く事はなかった