第2章 心をさらったあなたへ
翌日。朝の診察に病室の戸を叩く
コンコン
「不死川さん、おはようございます」
しーん
「入りますね」
ガラララ
「起きてくだ…何事ですか!」
寝台の足元に倒れる身体を抱き起こすと不死川さんは盛大に顔を顰めた
床に散る赤い雫は…点滴の針が外れた時のものね。傷は開いていないみたいでよかった。
「起きてるしうるせェし遅ェ…」
「遅ェじゃありません。頭は打っていませんか」
「打ってねェ」
力の抜けた身体を寝台に担ぎ上げ寝かせる
頭、首、創部、特に激しく打ったところはないみたい。
針の抜けた腕も血は止まっている。
「瀕死の怪我の直後に、寝台からの落下と自己抜針ですか。自己というか事故というか…一体どういうおつもりですか?」
「………」
不機嫌そうに顔を背ける彼の脇腹をちょっと突ついてみた。
「いっっってェふざけてんのかァ!」
涙目で振り返ってきた。
「それはこちらの台詞ですね。傷が開いていたらあなたといえど確実に死んでいます」
「…チィッ…厠に行こうとしただけだァ」
「よほど死にたいようですね」
「あ”ぁ?」
「というのは半分冗談ですが。」
「お前本当に医者かよ」
「今の不死川さんの体にはとにかく血が足りていないのです。一人で歩くなんて無茶です。厠へは私が介助しますから」
「だからァ…お前は女だろどんな神経してんだァ」
「男性ならいいのですか?」
「そういう問題じゃねェよ」
「ご心配なさらずとも不死川さんの体は全て知っています」
「嫌な言い方すんじゃねェ!!!」
言い合うこと五分。
「…入って来たら殺すからなァ」
「五分出てこなかったら冨岡さんを呼びますからね」
私は『介助は厠の手前まで』という条件をのみ、
不死川さんは『冨岡の刑(失礼)』をのんだ。
結果、不死川さんはなんとか自力で病室に生還しましたとさ。めでたしめでたし。
(冨岡さんに感謝だ。それはもう心から。ちょっと可哀想だけど…冨岡さんの名前出した時の不死川さんの顔凄かったなぁ…)