第2章 心をさらったあなたへ
「…何してんだァ…」
「おはようございます。不死川さん」
次に目覚めると、怠かった身体はいくらか軽くなっていたが頭に妙な感触があった
「髪を梳いています。痛くないですか」
「んなもんほっと…け…けほっごほっ…」
「ちょっと首起こしますね。水、飲めますか」
「…ん…っぅ、げほっけほっ…」
カラカラの口に入った水は冷たくて甘かった。
しかし喉が固まったようになって上手く飲み下すことができない。
「ゆっくり。ゆっくり飲んでください」
冷たい水が喉を通ると、いくらか声が出しやすくなってきた
「俺、生きてんのか」
「ええ」
そういえば、さっき首に差し入れられた手の温度には何となく覚えがあった。
朧げな記憶だが、おそらくこの女が俺の治療をしたのだろう
「…世話かけたな」
「いえ。ここに運ばれた経緯は思い出されましたか?」
「…あぁ」
「今の状況からもお分かりかと思いますが、あなたのお腹、ぐちゃぐちゃでした。呼吸で筋肉を絞っていなければとうに死んでいます。」
「………」
ぐちゃぐちゃとか死んでるとか…当人に言うか普通。
「…ギリギリ間に合ったんだが、食われそうになってたガキ庇ったら首刎ねると同時に刺されてそのまま投げられた」
「…道理で。
呼吸で中身は押さえられていたのが幸いでした。」
だから中身とか言うな。
胡蝶といいコイツといい、蝶屋敷の女はちょっとおかしいと思う。