第2章 心をさらったあなたへ
しばらくそのまま俯いていた千聡は、思い切ったように顔を上げた
「恥ずかしついでにひとつ、お願い聞いてもらえませんか…?」
「なんだァ」
「もう一回、ぎゅってしてほしいです」
「…本気か?」
「はい」
背中に手を伸ばして引き寄せると、びくりと体を揺らした
「やっぱ怖ェだろ」
「不死川さんなら、怖くありません。
あの時は気づかなかったんですが、かなり乱暴にサラシを取られたみたいで、ぐるっと擦り傷みたいになって…ちょっと痛かっただけです」
緩めた腕を引き留めるように、千聡の手に力がこもった
「…こわかった……」
もう一度そっと引き寄せた体は、小さく震えていた
しばらくそうしていると、腕の中で千聡が身じろぎをした
「ありがとうございます。もう「なァ、お前はまだ俺の”担当医”か?」」
「…?そうですね」
ーーー俺は、選んでもいいんだろうか
明日をも知れぬ身で
誰かと共に生きることを
望んでもいいんだろうか
「じゃあ、俺はお前の何だ?」
「え…?」
「俺は」
いや、答えはもうとっくに決まってたのかもなァ
「何の口実もなしに、お前を守れる立場が欲しい」
隊服の背をぎゅっと掴まれた
顔を押しつけられた胸のあたりがじわりと温かくなったのは
千聡の涙か、それとも別の何かか。
傷に触らないよう肩のあたりをそっと撫でると、顔を上げた千聡とふと目があった